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派遣労働と格差社会について
2006年11月
 社団法人 日本人材派遣協会
 
   はじめに
   1.派遣業の浸透
   2.派遣活用の現状
   3.派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い
   4.派遣の役割
   5.今後の対策
   6.まとめに換えて
 
※印刷用PDFファイル
   派遣労働と格差社会について
 
 
はじめに
 当人材派遣協会は、一般労働者派遣事業を営む約700社が加盟して構成されている。事業所数では7%弱であるが、売上高では70%を占めており、労働者派遣事業の適正運営を図る団体である。
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1.派遣業の浸透
 派遣法成立から20年、数度に亘る法改正による規制緩和もあって、人材派遣業は大きく成長し、売上高3兆円(注1)、派遣労働者実数120万人(注2)、派遣先事業所数50万(注3)を数え、我が国労働市場の需給調整機能の重要な部分を占めるに至った。

 この間の企業をめぐる情勢の変化としては、
バブルの崩壊以降、ホワイトカラーの生産性の向上が各企業に迫られ、業務のアウトソーシングとコア業務・ノンコア業務の整理が進み、多様な形態の労働力を使わざるを得なくなったこと。
サービス、製品のライフサイクルが短くなり、より新しいもの、効率の良いものを求められた結果、サービス方法の改善や生産方式の変更、それに伴う手法や技術の進展が見られ、こうした状況に迅速に対応するためには、必要な能力を持った人材を必要な場面に応じ補充しなければならなくなったこと。
グローバル化の進展に伴うアジア諸国を始めとする発展途上国の追い上げ等もあって、大幅なコストの削減や合併等による規模の利益の追求が求められ、労働力の調整が推し進められたこと。
 などが挙げられる。

 一方で、労働力をめぐる情勢の変化を見ると、
働き方における意識の多様化が進んでいること。
女性の社会進出、高学歴化、高齢化などに伴って働き方やライフスタイルの多様化が進んでいること。
 などが挙げられる。

 こうした諸情勢を受けて、派遣業は大きな成長を見せたが、戦後の日本型雇用慣行の崩壊と、平成不況の同時進行の中で、教育水準、個々人の努力、運・不運など様々な事情から、「いわゆる安定雇用」からはずれた者、氷河期で就職が難しかった者の受け皿(就業先)としての役割も一部果たしたことと、業界として成長が急であったことから、「格差社会」の議論が活発化する中で、一部のマスコミや団体等から「派遣」という働き方が、格差社会の象徴のような言われ方をすることがある。
 そもそも、格差は同種のカテゴリー間の比較であるべきなのに、異質のカテゴリーのものを、賃金という同一の尺度で比較しており、単純に比較すべき事柄ではない。
 また、派遣会社が無ければ格差が存在しないかといえば、決してそんなことは無く、むしろ派遣会社は就労意欲を持つ労働者に仕事を供給することで、雇用の安定、社会の安定に寄与している。
 我々としては、派遣業の果たしている役割、目指している方向を正しく理解し、評価して欲しいと願っている。
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2.派遣活用の現状
○ライフスタイルの多様化の中で派遣という働き方を積極評価して選択する人が増えている。
 厚生労働省が行った労働力需給制度についてのアンケート調査(2005)(注4)によると、派遣労働者の多くは、「働きたい仕事内容を選べる」「働きたい曜日や時間あるいは期間を選べる」「自分の能力、資格を活かせる」「仕事の範囲や責任が明確」など、積極的に派遣を評価して選択していることがわかる。
 また、派遣を利用する企業側に対して、同じく厚生労働省が行った、労働者派遣事業実態調査(2005)(注5)によると、「必要な人員の確保」や「一時的な業務量変動への対処」と言った理由で派遣を利用している企業が多く、コスト削減目的を大きく上回っている。
 さらに、労働政策研究・研修機構が行った「日本人の働き方総合調査」(2005)(注6)でも、派遣で働く理由として「自分の都合と折り合える」からという前向きな回答が45%と最も高くなっている。
 加えて、同調査によれば、正社員は、雇用や収入の安定性では非正社員よりも満足度が高いが、仕事の内容、労働時間、仕事へのストレス等で満足度が低く、「仕事に対する満足度」全体としては、非正社員のそれより低いと言う結果になっている(注7)
 従来、必要な人員の迅速な確保や、労務コスト削減の方策として、主に派遣先側の理由で派遣が使われてきたが、最近は生活と調和の取れる仕事の仕方として、また、各人がその時々のより良い労働環境・待遇を求めて、働く側が派遣を活用するという方向も出ており、選択肢の一つとして確立されている。

○短時間、短期間等での就労を希望する者の受け皿になっている。
 派遣で働く人たちの事情は様々である。
子育て等家庭の事情で短時間しか働けない。
年金をもらっているので多くの収入はいらないが社会と繋がっていたい。
体力的に長時間労働はムリなので短時間働きたい。
教育費がかさむので家計補助のため、家事に負担のない仕事をしたい。
派遣でキャリアを積みたい。
派遣で自信をつけて正社員を目指したい。
 一方で、サービスや生産の時間的・季節的な変動、新しいサービスの導入等から、そうした労働者を受け入れて事業活動を行う事業主がいる。
 正規雇用だけが好ましいものでそれ以外が良くないものとするのであれば、こうしたフレキシブルな働き方は否定され、結果として、経済活動は停滞し、失業者も増加することとなる。

○派遣という働き方はスキルの早期かつ効率的な向上に適している。
 一般的に派遣社員は正社員に比べて能力開発の機会が乏しいとの指摘があり、スキルの向上やキャリア形成に各派遣会社が努力している。労働者の視点から見れば、派遣労働者として多くの職場を経験し、あるいは、自分が身に付けたいスキルの習得が可能な仕事を選ぶことで、早期に的確なスキルを習得することができ、エンプロイアビリティーを高められる。これにより、社会全体の「雇用の安定」の確保が図られる。
 派遣業界は、労働者の能力がひとつの企業ではなく、広く社会に通用するような視点を持ってアドバイスを行い仕事の紹介を行っている。
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3.派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い
○派遣労働者は120万人で、雇用者全体の2%
 非正規労働者といわれる者のうち、パート・アルバイトは1,100万、契約社員等が約300万、これに対して派遣は120万で、非正規の8%(雇用者全体の2%)に過ぎない(注2)。 雇用形態による格差を言うのであれば、パート・アルバイトに対する待遇改善措置や雇用管理等の対策をまず検討すべきである。

○派遣労働者と正規社員の賃金格差
 派遣労働者の年収には、他の層(正規社員、パート・アルバイト、契約社員等―これらはほぼ正規分布で、山は1つ)と違って2つの山がある。
 1つは「55〜99万」で、もう1つは「200〜249万」。前者は短期・短時間で働く者で、後者は正規同様フルタイムで働く者である。これを単純平均して比較するため、正規社員との差が強調される。
 また、正規社員の年収には、賞与、住宅手当、扶養手当等が含まれており、直接の労働に対する対価としての差は、それほど大きくないと考えられる。
 なお、パート・アルバイトの年収は「55〜99万」に集中している(以上、厚生労働省労働経済白書、2006)(注8)
 ここれも、格差を言うならば、パート・アルバイトの労働環境の把握と整備に向けた対策をまず検討すべきである。
 そもそも、賃金の差は、スキル、経験、業務内容の違いによって生じているものである。

○派遣は安定雇用の提供に貢献している。
 上述の、労働力需給制度についてのアンケート調査(厚生労働省2005)(注4)によると「正社員として働きたいが就職先が見つからなかったため」、「正社員の就職先が見つかるまでのつなぎとして」派遣で働く者もおり、派遣会社はこうした者に就業の機会を提供している。さらに、紹介予定派遣が制度化されたことにより、正規雇用を望む派遣労働者の安定雇用の機会が増加している。
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4.派遣の役割
 少子高齢化が言われる今日、雇用形態に関わらず我が国全体のエンプロイアビリティーを向上させていくことがきわめて重要である。多様化する雇用形態をサポートすることにより、フレキシブルな経済社会の発展に寄与していくことが派遣事業の意義である。
 繰り返しになるが、失業予防や経済活動の担い手として派遣は重要な役割を果たしてきたし、今後も果たし続けていくべきと考えている。
 正規、非正規、アウトソーシング等はそれぞれに特徴があり、存在意義がある。どれが良くてどれが悪いといった二者択一的な議論からは何も生まれない。それぞれの特徴や役割を理解し、企業側がこれらを有効に組み合わせできるよう派遣として支援を行い、また一方で労働者のニーズに応えた働き方を提供していくことが必要であると考えている。
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5.今後の対策

 企業と労働者の多様なニーズの受け皿として、派遣業が今後とも機能していくために、また、必ず訪れる景気調整局面で増加するであろう非正規労働者の最も優れた受け皿となるためにも、派遣労働者が安心して働ける就労環境を引き続き整えていくことが求められる。そのため、業界として、
(1)
コンプライアンスを徹底し、受け入れ企業に対しても法令順守の働きかけを行う。
(2)
各種社会保険の全面適用を徹底する。
(3)
社会保険を始めとする各種制度が、正規労働者を前提に整備されているので、派遣(短期、断続、移動)に適した制度の改革を求めていく。
(4)
正社員希望のスタッフに対し、それに向けた必要な援助を行う。
(5)
キャリア形成を希望する者に対する能力開発の進め方について検討する。
(6)
派遣先に理解を求め、安全衛生やリーガルコストに関して、派遣元と派遣先の責任分担を整理する。
 などに、積極的に取り組んでいく。

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6.まとめに換えて
 正規社員と非正規社員の格差は、解雇の難しさなど正規社員に対する雇用保障が大きいことや、まだまだ残っている賃金の年功制・フリンジベネフィットなどに起因する要素が大きいと言われており、同一価値労働同一賃金の横断的な職種別労働市場を形成するためには、この点をどうするかの検討がまず必要となる。
 また、格差の議論は正規社員と派遣の間にのみ存在するわけではない。正規社員同士でも業績給、能率給の導入に伴って格差が拡がっているし、個別の企業間でも、業種間でも、企業規模間でも、また、地域間の格差も拡大している。
 格差は競争社会の産物であり、競争なくして社会の発展はあり得なかった。我が国は、グローバル化の進展の中で、引き続き国際競争力の維持、確保を図る必要がある。そのためにも、努力に応じた一定程度の格差は容認されるものであろう。格差を全く無くしたら個々人のやる気が失われてしまい、社会の発展が期待できなくなるのは事実であるから、「我が国は、諸外国に比して格差が小さい社会である」とも言われているなか、グローバルでのスタンダードはどこで、我が国はどのレベルを目指していくのかを明確にし、個々人の雇用の安定を図りつつ、労働者のモチベーションを最大限活かすような「格差」はどのあたりまでの差なのかについて議論を尽くすことも重要であろう。
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−格差社会 資料−
(注1) 1 派遣業の浸透「売上高3兆円」
売上高
(資料出所:厚生労働省「平成16年度労働者派遣事業報告集計結果」)
→ 本文に戻る(1.派遣業の浸透)
 
 
(注2) 1 派遣業の浸透「派遣労働者120万人」
(注2) 3 派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い「派遣労働者120万人(非正規労働者の内訳)」
雇用形態別・雇用者数(抜粋)
(資料出所:総務省統計局「労働力調査詳細結果(平成14年、18年1〜3月期平均)の概要」から作成)
→ 本文に戻る(1.派遣業の浸透)
→ 本文に戻る(3.派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い)
 
 
(注3) 1 派遣業の浸透「派遣事業所数50万」
派遣先件数
(資料出所:厚生労働省「平成16年度労働者派遣事業報告集計結果」)
→ 本文に戻る(1.派遣業の浸透)
 
 
(注4) 2 派遣活用の現状「派遣という働き方を積極評価(派遣労働者)」
(注4) 3 派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い「派遣は安定雇用の提供に貢献している」
派遣という働き方の選択理由
(資料出所:厚生労働省「労働力需給制度についてのアンケート調査 集計結果(平成17年実施)」)
→ 本文に戻る(2.派遣活用の現状)
→ 本文に戻る(3.派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い)
 
 
(注5) 2 派遣活用の現状「派遣という働き方を積極評価(派遣先)」
(資料出所:厚生労働省「労働力需給制度についてのアンケート調査 集計結果(平成17年実施)」)
→ 本文に戻る(2.派遣活用の現状)
 
 
(注6) 2 派遣活用の現状「派遣という働き方を積極評価(派遣労働者)」
登録型派遣社員という働き方を選択した理由(男女比別)(%)
(資料出所:労働政策研究・研修機構「日本人の働き方総合調査(2005)」)
→ 本文に戻る(2.派遣活用の現状)
 
 
(注7) 2 派遣活用の現状「派遣という働き方を積極評価(労働者全般)」
仕事上の不安や悩み、ストレス/今の仕事全体についての満足度
(資料出所:労働政策研究・研修機構「日本人の働き方総合調査(2005)」)
→ 本文に戻る(2.派遣活用の現状)
 
 
(注8) 派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い「派遣労働者の年収には、他の層と違って2つの山がある」
年間収入雇用形態別労働者の構成比
(資料出所:厚生労働省「労働経済白書(平成18年版)」)
→ 本文に戻る(3.派遣スタッフが格差の元という指摘は間違い)
 
 
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