改革試案の検討に先立ち本研究会の労働者派遣事業に関する基本的な認識、検討のスタンスを確認しておきたい。
まず、研究会のスタンスは下記の3点になる。
(T) 労働者派遣事業の諸規制は、原則自由化されるべきである。
(U) 労働者派遣法は、万人に理解・周知できる、遵守しやすい簡潔な法律とすべきである。
(V) 派遣元事業主は、自主的な規制の下に活動し、且つ業界として自浄機能を発揮すべきである。
では、現行の労働者派遣法の諸前提について、上記のスタンスから導かれる基本的な認識について述べる。
(1) 労働者派遣は、「臨時的・一時的」な労働力の需給調整機能ではない。
そもそも労働者派遣事業は、派遣先の常用雇用代替防止を前提としている。所謂政令26業務においては、実質的に派遣期間が規制され、また政令26業務以外の業務においては、1999年にその派遣が解禁された際に「労働者派遣事業制度は臨時的・一時的な労働力需給調整に関する対策」と明確に位置付けられた経緯がある。
しかし、「不安定雇用(派遣)を制限すれば、安定雇用(常用雇用)が増える」という論理は、立証されていないばかりか、あまりにも短絡的で且つ労働者の質の多様性を考慮していない。また、派遣先進国である欧米各国においても、労働者派遣事業に対する制限の程度差はあっても、派遣労働者人口が就業者人口の5%を超える国はないのである。
日本も批准したILO181号条約に則り、官民が協力して労働力需給調整に当たるということであれば、臨時的・一時的であるかは問題ではなく、人材派遣においても有料職業紹介等他の人材サービス同様な需給調整の役割を担うべきである。
(2) 労働者派遣は、役務の提供ではなく、人材の提供である。
職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)の例外(注4)として、労働者派遣事業が許容された経緯としては、役務の提供である以上人材の提供ではなく、中間搾取や強制労働の対象にならないという解釈がある。
しかし、政令26業務と所謂自由化業務の取扱においては、この解釈が貫かれているとは考えがたい。
前者では人材において適用されている事項(雇用申込み義務)があり、後者では役務に適用されている事項(雇用申込み義務、派遣期間)がある。
人材の提供であれば、事前面接の解禁や派遣期間が労働者一人一人に平等適用されること(注5)が可能になるのではないか。
ただし、役務の提供でないとすれば、契約期間中の人材変更に対する考え方も整備が必要である。
(3) 派遣労働者の就業環境整備を目的とした法律への回帰が必要である。
派遣法やこれに基づく現行規制は一体、誰のためにあるのか。
健全な労働者派遣業界の発展には、労働者派遣事業に対する信頼性の維持向上は欠かすことができない。事業規制法の性格を有しているといわれる現行の労働者派遣法を抜本的に見直し、平易であればこそ遵守し易い制度構築を求める以上、我々は協会を挙げて現行の法令遵守への徹底的な取組みを進める必要を強く感じている。
さて、派遣元にとって、派遣先が顧客であることは言うまでもない。しかし、労働者派遣ビジネスにおいては、派遣労働者もまた派遣元の顧客なのである。もし、その意識がなければ、派遣就業における様々なトラブルが頻発し、派遣労働者の適正な保護はもとより安定就労は確保しがたいものになるであろう。
派遣元にとって最大のミッションは、ベストマッチングの実現により、双方の満足度を最大限にし、よって我が国における雇用創出(注6)に貢献をすることである。そのためには、派遣労働者の多様性を考慮した上で、派遣労働者ゆえに課せられる諸規制からの解放は極めて重要であろう。
「自分の就きたい職業に制限がある」、「同じ就業先で派遣として働きたくても法や派遣先の制度運用の仕方によって期間が制限される」、「事前に仕事の適性を指揮命令者等と確認し合えない」等の現状を打開するために、現在の事業規制を目的とした法律から、派遣労働者の就業環境整備を目的とした法律への見直しが必要不可欠であると考える。
(4) 労働市場における取引ツ−ルとして、労働者派遣がビジネスとして存在する。
労働者派遣事業の主要な機能は、派遣先と派遣労働者のニーズのマッチングによる雇用創造・促進である。我が国の労働市場では、過去において期間の定めのない典型雇用が主体であったが故に非常に硬直的であった。しかし、今後は、派遣を含む多様な就労形態が労働市場全体としてマッチング(取引)を増大させ、その結果として労働市場を通じた雇用保障の実現を図ることが可能である。ここで
重要なことは、様々な就労形態のうち、労働者派遣は「ビジネスとしてマッチング(取引)を行う」という点である。つまり、ビジネスとして入るが故に『サービス=機能』が最大の魅力となり、最大の武器とならなければならない。
派遣元は下記のサービスを提供する。
【対派遣先】
・迅速な適材提供(スタッフィング)
欠員時に迅速な労働力の補充ができる。
能力の測定や選別の手間を省くことができる。
・フラットな(固定費を抑えた)組織の実現
繁閑に応じた労働力調整が可能である。
コア業務とルーティン業務の切り分けによる雇用調整が可能である。
・労務管理負担の軽減
給与支払・社会保険加入・有給休暇の付与など雇用者としての手続きが不要になる。
間接費を見込む必要がないので、業務量に応じた予算化がしやすい。
・人事労務関連費用の抑制(募集・採用費、教育訓練費等)
成果予測不可能な募集広告費の計上や、履歴書選抜・採用面接などの労務が不要である。
事務用機器操作・マナーなどの基本的な能力教育を自社内で施す必要がない。
・社内業務の活性化
適度な人材の入れ替わりによって職場の沈滞化を防止できる。
適材な派遣労働者が入ることで業務の見直し・効率化を図られる。
【対労働者】
・雇用機会の提供(希望職種による就労、求職活動の軽減)
希望と適性に応じた就業先を見つけることができる。
就職情報収集する時間や労力を軽減できる。
・ライフキャリア開発(注7)(多様な生き方の実現、仕事のスキルアップなど)
希望する職種・条件で就業できる。
意思に反した転勤や異動が生じない。
|