しくみと法律

派遣の仕組み

人材派遣の場合は派遣社員にとって、派遣会社は雇用契約を結ぶ雇用主、派遣先企業は実際に仕事をする勤務先、使用者となります。派遣会社は雇用主として給与の支払いや福利厚生、仕事の紹介、派遣先企業との交渉、スキルアップ研修などを通じて、派遣社員をサポートします。派遣先企業は使用者として派遣社員に対して仕事の指示を行います。

適用される法律

人材派遣という仕組み全体は労働者派遣法により派遣会社、派遣先の双方が守らなければならないことが多数決められています。また、派遣会社には雇用主として、派遣先企業には使用者として遵守しなければならない労働関係法令が適用されます。

労働者派遣法

労働者派遣法における公正な待遇の確保(いわゆる「同一労働同一賃金」)、雇用安定措置、キャリアアップ措置義務などについては「派遣という働き方」をご覧ください。

派遣事業を行える会社の条件

人材派遣事業は、厚生労働大臣による許可制です。また、許可取得後も定期的に更新手続きをする必要があります。

許可基準

  1. 人材派遣を特定の企業に行うものでないこと
  2. 派遣社員へのキャリア形成支援を適切に行う能力・体制が整っていること
  3. 雇用管理を適切に行うための体制が整備されていること
  4. 個人情報の適正管理や、派遣社員の秘密保護のための体制が整っていること
  5. 派遣事業を適正に運営できる資産・財産があること

派遣が利用できない業務

港湾、建設、警備、医療関連業務、弁護士・社会保険労務士などのいわゆる「士」業については、派遣法の適用範囲から除かれ派遣が禁止されています。

上記各業務に関しては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第四条、及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令」第二条で決められています。

●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
(昭和六十年七月五日)(法律第八十八号)
第四条
何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)
建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。
警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節、第二十三条第二項及び第三項並びに第四十条の二第一項第一号において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
●労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令
(昭和六十一年四月三日)(政令第九十五号)
第二条
法第四条第一項第三号の政令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務について紹介予定派遣をする場合、当該業務が法第四十条の二第一項第三号又は第四号に該当する場合及び第一号に掲げる業務に係る派遣労働者の就業の場所がへき地にある場合を除く。)とする。
医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十七条に規定する医業(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院若しくは同条第二項に規定する診療所(厚生労働省令で定めるものを除く。以下この条において「病院等」という。)、同法第二条第一項に規定する助産所(以下この条において「助産所」という。)、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十五項に規定する介護老人保健施設(以下この条において「介護老人保健施設」という。)又は医療を受ける者の居宅(以下この条において「居宅」という。)において行われるものに限る。
歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十七条に規定する歯科医業(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。
薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第十九条に規定する調剤の業務(病院等において行われるものに限る。)
保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第二条、第三条、第五条、第六条及び第三十一条第二項に規定する業務(他の法令の規定により、同条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として行うことができることとされている業務を含み、病院等、助産所、介護老人保健施設又は居宅において行われるもの(介護保険法第八条第三項に規定する訪問入浴介護及び同法第八条の二第三項に規定する介護予防訪問入浴介護に係るものを除く。)に限る。
栄養士法(昭和二十二年法律第二百四十五号)第一条第二項に規定する業務(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導に係るものであつて、病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)
歯科衛生士法(昭和二十三年法律第二百四号)第二条第一項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)
診療放射線技師法(昭和二十六年法律第二百二十六号)第二条第二項に規定する業務(病院等、介護老人保健施設又は居宅において行われるものに限る。)
歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第一項に規定する業務(病院等において行われるものに限る。)
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前項のへき地とは、次の各号のいずれかに該当する地域をその区域に含む厚生労働省令で定める市町村とする。
離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第二条第一項の規定により離島振興対策実施地域として指定された離島の区域
奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)第一条に規定する奄美群島の区域
辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(昭和三十七年法律第八十八号)第二条第一項に規定する辺地
山村振興法(昭和四十年法律第六十四号)第七条第一項の規定により指定された振興山村の地域
小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和四十四年法律第七十九号)第二条第一項に規定する小笠原諸島の地域
過疎地域自立促進特別措置法(平成十二年法律第十五号)第二条第一項に規定する過疎地域
沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第三条第三号に規定する離島の地域

期間制限

「派遣先事業所」単位の期間制限

派遣先企業には「期間制限」があります。派遣先企業の同一事業所が派遣社員を受け入れられる期間は、原則3年が限度となります。3年を超えて派遣社員を受け入れたい場合は、労働組合などからの意見を聞く必要があります。
  • 施行日以降、最初に新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日が、3年の派遣可能期間の起算日となります。それ以降、3年までの間に派遣労働者が交替したり、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、派遣可能期間の起算日は変わりません。(したがって、派遣可能期間の途中から開始した労働者派遣の期間は、原則、その派遣可能期間の終了までとなります。)
  • (厚生労働省)「平成27年労働者派遣法改正法の概要」より

「派遣労働者個人」単位の期間制限

派遣社員には「期間制限」があります。一人の派遣社員が派遣先企業の「同じ部署」で勤務できる期間は、3年が上限となります。その後は「異なる部署」であれば派遣社員として勤務することができます。
  • 組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することができますが、事業所単体の期間制限による、派遣可能期間が延長されていることが前提となります。(この場合でも、派遣先は同一の派遣労働者を指名するなどの特定目的行為を行わないようにする必要があります。)
  • 派遣労働者の従事する業務が変わっても、同一の組織単位内である場合は、派遣期間は通算されます。
  • (厚生労働省)「平成27年労働者派遣法改正法の概要」より

期間制限の例外

  • 無期雇用の派遣社員
  • 60歳以上の高齢者
  • 有期プロジェクト業務(終わる時期が明確なもの)
  • 日数限定業務(派遣先の所定労働日数よりも相当程度少なく月10日以下)
  • 産前産後・育児・介護休業代替業務

労働契約みなし制度

2012年の法改正により、「労働契約みなし」制度が設けられ、2015年10月1日から施行となっています。この制度は、違法派遣を受け入れた派遣先に対し、対象の派遣社員を直接雇用するよう強制的に雇用契約の申込みをしたものとみなす制度です。
対象となる「違法派遣」や、みなし制度の概要は以下をご覧ください。

対象となる「違法派遣」

  1. ① 派遣禁止業務(港湾・建設・警備)で働かせた場合
  2. ② 無許可の派遣会社からの労働者を受け入れた場合
  3. ③ 偽装請負の場合(請負などの名目で派遣契約を締結せずに実態は派遣として利用した場合)
  4. ④ 派遣受け入れ可能期間を超えて派遣を利用した場合

派遣労働とみなし制度のイメージ図

その他の制限事項

日雇派遣の原則禁止

派遣は「臨時的・一時的」が原則ではあるのですが、日雇派遣を行う事業者の中に、本来雇用者側が果たすべき法的責任が守られていないケースがあり、労働災害の発生の原因にもなっていたこともあり2012年の法改正で原則、日雇派遣は禁止とされました。 ただし、禁止とされた日雇派遣は労働契約が30日以内の派遣のことを指しますので、労働契約が31日以上であれば、働くことが可能です。

例外として、以下の場合は、日雇派遣で働くことができます。

可能な業務

  • ソフトウェア開発
  • 機械設計
  • 事務用機器操作
  • 通訳、翻訳、速記
  • 秘書
  • ファイリング
  • 調査
  • 財務処理
  • 取引文書作成
  • デモンストレーション
  • 添乗
  • 受付、案内
  • 研究開発
  • 事業の実施体制の企画、立案
  • 書籍などの制作、編集
  • 広告デザイン
  • OAインストラクション
  • セールスエンジニアの営業
  • 金融商品の営業
  • 看護業務関係(※)
※病院等の医療機関以外である社会福祉施設などへの看護師の日雇派遣

可能な方

対象確認書類
60歳以上の者年齢が確認できる公的書類など
昼間学生学生証など
副業や主たる生計者以外の者(主婦など)
(年収や世帯収入が500万円以上)
本人・配偶者等の所得証明書、源泉徴収票など

グループ企業派遣への制限

派遣会社と同一グループ内の事業主が派遣先の大半を占めるような場合は、人材派遣の適切な利用法といえないため、派遣会社がそのグループ企業に派遣する割合は全体の8割以下に制限されています。

離職後1年以内の元従業員の派遣労働者としての受け入れ禁止

企業内で働いていた方を派遣社員に置き換えることで、労働条件が切り下げられることのないよう、派遣会社が離職後1年以内の人と労働契約を結び、元の勤務先に派遣することが禁止されています(元の勤務先が該当者を受け入れることも禁止されています)。

労働関連法

労働者派遣法以外にも派遣会社には雇用主として、派遣先には使用者として法律で定められた守らなければならない義務があります。主な労働関連法は以下のとおりです。
労働基準法(1947)労働条件の最低基準を定めた法律
労働契約法(1947)労働関係の安定のために
会社と社員の労働契約の基本ルールを定めた法律
最低賃金法(1956)社員の生活の安定のために賃金の最低額を定めた法律
労働安全衛生法(1972)社員の安全と健康確保のための職場環境基準を定めた法律
男女雇用機会均等法(1986)男女の性差別なく、また女性が母性を尊重されつつ充実した社会人生活を過ごすための施策実施について定めた法律
派遣社員の産休や育休に関するリーフレット
パートタイム・有期雇用労働法(2020)同一企業内における無期雇用フルタイム社員とそれ以外(短期間・有期雇用など)の社員との均等均衡に考慮した処遇や労働条件確保のための施策実施について定めた法律
労働者災害補償保険法(1947)仕事中や通勤途中の負傷・疾病・障害・死亡に対する補償制度について定めた法律
労働施策総合推進法(1966)労働施策の総合的な推進ならびに会社が対応すべきパワーハラスメント防止や外国人労働者等労働者の雇用の安定や職業訓練・給付金などについて基本方針を定めた法律